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中小企業金融円滑化法の近況と具体例(1/3)

この記事は「実務経営ニュース 2011年10月号」に掲載されたものです。

最近の傾向

中小企業金融円滑化法が、平成21年12月4日に施行されてから1年が経過し、平成24年3月31日まで延長されたこともあり、今年になってから、再リスケの支援依頼が増えている。

そのなかでも、『昨年(平成22年)、資金繰りが苦しく、銀行に相談し条件変更を行った。そろそろ1年が経過するが、経営は芳しくない。円滑化法が延長されたので、再度条件変更を銀行にお願いしようと思う。ただ、このまま経営を続けても資金繰りがますます苦しくなり、二進も三進もいかなくなるのが目に見えている。何とかしたい。』という相談が多い。

具体例

具体的に4社の経緯と現状を紹介したい。

第一に、これらの企業に共通して言えることは、平成22年に、金融機関に脅したり賺されたりしながら元本返済を棚上げし、ようやく造った資金的余裕・・・、と言うよりは、これらの企業にとっては『できてしまった資金的余裕』であったことである。

第二に、資金的余裕ができ安心してしまい、本来、その資金的余裕を活用してなすべきであった経営改善をも棚上げしてしまったことである。なかには、コンサルタントに依頼し、経営改善計画を策定した企業もあったが、コンサルタント報酬を節約するため、独力でチャレンジした結果挫折して、元の木阿弥になってしまった企業も存在する。

なお、守秘義務の制約上、事例には多少の脚色を加え、企業を特定できないようにしている。

A社
会社概要

業種:製造業
従業員数:18人(ピーク時36人)
売上高:3億円(ピーク時6億7千万円)
借入金:5億円

経営状況

ピーク時、6・7億円あった売上が一挙に半分となり、元利返済が苦しくなり、第1回リスケを独力で行った。独力で銀行交渉したため、元本返済額を十分に減額できず、売上の減少と共に重圧となっている。
元々、製造工程に重大な欠陥があるうえ、原価管理が不十分であった。条件変更ができ、資金繰りが楽となりホッとしたまま、経営改善に着手することなく、時間だけが経過してしまった。

最も悪かったのは、銀行の指導で固定費を削減しようと、自社の『売り』を分析・認識することなく、何が強みか認識することもなく、従 業員を無闇やたらと削減してしまったことである。
銀行の望み通り、固定費を減らすことはできたが、最大の強みであった『精密加工』ができなくなってしまった。

営業部門は存在するには存在したが、棚ボタ式の待ちの営業で、景気が好転すれば売上も増えるものと信じ込み、営業方法を改善することもなかった。有効な売上増加手段も講じることができず、売上がさらに落ち、第1回リスケ時に隠していた虎の子も使い切り、運転資金に窮し、再リスケせざるを得ない状況にあった。

B社
会社概要

業種:土建業
従業員数:15人(ピーク時20人)
売上高:4億円(ピーク時6億円)
借入金:5億円

経営状況

バブル時代に銀行の勧めに乗り、目的もなく5億円で土地を購入してしまった。あっという間に時価が下がってしまい、売るに売れず、どうしようもできない状態にある。一方、経営面では、売上はそこそこあったが、創業社長の放漫経営がたたり、元利返済に窮し、第1回のリスケを申請した。

条件変更で資金繰りが楽になり、ホッとしたまま、経営改善に着手することなく時間だけが経過してしまった。経営が顕著に苦しくなり始めたころ、突然創業社長が病に倒れてしまった。

土建業の経験のない妻は、廃業を考えたが、銀行、取引業者、従業員に押し切られ、経営を引き継いでしまった。 放漫経営者ではあったが、原価管理・工程管理には厳しかった創業者がいなくなり、当初は従順であった従業員も、『経験のない妻」を軽んじ始め、勝手し放題となってしまった。

その結果、見積もり・入札段階、工事管理・原価管理が杜撰となり、工事益を十分に出せなくなってしまった。重機・ダンプを保有していたが、運転資金調逮のため、切り売りを始めている。経営者は、私財を既に数千万円つぎ込み、これ以上は資金調達できなくなり、再リスケを考え始めた。

C社
会社概要

業種:一般貨物運送業
従業員数:15人
売上高:1.5億円
借入金:1.5憶円

経営状況

特殊トラック輸送という強みを保有し、新規参入企業もなく、安定した事業環境にあった。ところが、バブルが崩壊し、売上が激減した。僅かにあった企業内蓄積もなくなり、資金繰りに困窮し、第1回リスケを行った。

経営改善すべきであったのに、『新規事業に進出し、基幹事業さえ作れば、売上が増加し経営も安定する』と言った助言を信じてしまった。経営環境を分析せず、何が自社の強みかも把握しないまま、事業計画も立てず長距離輸送、小型トラック輸送に次々進出した。新規事業に進出すれば、どうにかなると思っていたが、思惑通りにいかず、新規設備投資がたたって資金繰りに窮し、再リスケを申請しようとしている。

D社
会社槻要

業種:建築設計業
従業員数:12人
売上高:1億円
借入金:1.2億円

経営状況

バブル後半に、金融機関に勧められ、借入金2億円で自社ビルを買ってしまった。その後、バブル崩壊・姉歯問題・公共投資削減で建設市場が低迷したため、銀行から運転資金を借り入れ、自転車操業の状態で会社を維持してきた。長引く建設市場の低迷に耐えきれず、第1回のリスケを申請した。

景気さえ回復すれば何とかなると思い、経営改善をすることなく、従来通りの経営を続けてきた。ところが、建設市場は回復せず、売上は低迷した。金融機関から運転資金を調達できず、数千万円の私財を投入してきたが、これ以上は資金負担に耐えることができず、再リスケを申請した。

これらの企業が、未だに存続できているのは、平成21年12月に施行された『中小企業金融円滑化法』のおかげである。金融機関に返済条件の変更を義務付ける一方、中小企業は経営改善計画を作成しなくてもよかったため、多くの中小企業が条件変更を行った。平成22年12月に金融円滑化法が延長されたが、果たして、今後も今まで通り、再リスケができるであろうか?